2element CQ ANT 製作報告

JA7EBT  杉田    

 私のアンテナ製作経験は、開局当時のHF用ツエップアンテナと、再開局時にアパマン・ベランダ用の50Mhzフォークヘンテナを製作したくらいで、あとは市販のモービル・ホイップや4ele・6eleのHB9CVを購入して組み立てたことがある程度だった。
  過去に購入した50Mhz用の4eleHB9CVが経年劣化し、他のメーカーの4eleが販売されたのをきっかけに、移動用に4eleを再度購入した。
  その頃、50.240Mhz・SSBモービルグループではJH1AQZ信太さん製作の2eleデルタルループが大流行で、その性能は仲間内から高く評価されていた。
  一方、CQ出版社の『キュービカル・クワッド』や『ループアンテナ』などの別冊を見ると、デルタループよりは四角のキュービカルが、四角よりは完全なループの方がゲインがある、と記述されていたので、いつか四角を製作しようと思った。
  しかし、従来型の四角、即ちスプレッダーの先端に導線を四角に張るか、それともデルタループのようにエレメントとブームを直結した形で四角にするか、迷った。
  デルタループが見栄えするから、その方向での製作に傾いていたが、水平エレメントと垂直エレメントとの接合をどうするかという点で、漠然と考えるだけで2年間を費やした。
  例えば、中空壁に物を固定するときに使用するアンカーボルトで垂直パイプと水平パイプをネジ止めできないか、ワンタッチにできないか等々。
  ところが、その間に移動用に購入した4eleのHB9CVを、娘の愛犬が齧ってしまった。
  歯が生えかかっていて堅い物をかじるのだそうで、あの給電部のプラスチックを両方とも齧ってくれました。こうして移動用のアンテナがなくなり、いよいよ自作を迫られることになった。
  追い討ちをかけるように、JA1OJZ岩田さんが、作りますといいながらあれよあれよというまに2ele、4ele、6eleのキュービカルクワッドを製作してしまった。
  さらにJR2FVO藤井さんも5eleのクロス八木を製作してしまった。素早い有言実行にただ驚いた次第。
  このような中で、オシャカになったHB9CVのエレメントやブームを再利用しようという気になり、構想を一気に固めた。
  まずブームに4eleの廃材を利用した。
  エレメント間隔は0.12λ(72cm)で丁度よかったので、余分をカットした。
  エレメントはブーム直付けとし、底辺部分のエレメント(1.5m)は新規購入の太めのアルミパイプとし、その両端から上に伸びる垂直エレメントは4eleの廃材のアルミパイプとした。
  両端の接合方式は面倒なことは考えず、頑丈なスチール製L型金具でやってみることにした。
  上辺だけ導線とし、遠くからだと最近電信柱に設置されているPHSの中継アンテナの姿であり、大変上品(?)に見えた。
  材料の買い物から開始して、エレメントをノコギリで切ったり、ドリルでパイプに穴をあけて蝶ねじで止めたりする作業は延べ3週間、実働6日間(1日4時間程度)を要した。しかしこの作業は案外簡単であり、暑いときはビールを片手に楽しく行なえた。
  さて、給電部はガンママッチとし、3D2Vの同軸の余りと、その昔もっていたヘンテナの上下のエレメントパイプの一部を再利用した。コネククターも昔もっていたモービル用のすきまを通す細い同軸がついたものを再利用した。
  問題は、エレメントの長さやガンママッチのコンデンサー容量の調整である。一応エレメント間隔が0.12λであったし、エレメントも再利用だったから、JP1PFM寺井さんの仕事場でアンテナ・アナライザーを借りて測定すると、SWRも低いしインピーダンスも50Ωとぴったりなのである。
    それなのに家に帰り道路で組み立ててワッチしても、どうも聞こえ方が物足りない。
  「・・・極端な言い方をすればエレメント自体の共振周波数がズレていても、見かけ上のマッチングは完全ということもある・・・SWRが低い割には電波の飛びがスッキリしないということになり、・・・他人のオーバーパワーのせいにしたくなってくるから、要注意である」(JA1AEA鈴木 肇『キュービカル・クワッド』P.81)
  ははあ、このことだな、と実感した次第であった。
  パイプの太さや寸法からくる従来型のクワッドとの差を漠然と予想して廃材のエレメントを再利用して、最初やや小さめにエレメントを作成したのですが、今度は従来型のエレメント長に修正すべく、若干アルミパイプを継ぎ足してみました。
  この時点では測定はしていなかったのですが、そのままこれを持って、六道山の塔でAC変調をかけて遊んでいたJH1AQZ信太さんとJR2FVO藤井さんを訪ね、藤井さんの測定器で測定して頂いた。
  その結果ラジエータが47Mhzに共振していることが分かった。
  その際スタブが必要であるとかショートバーはエアバリコンで調整する方が良いとか貴重なご指導を頂いたが、その日のうちにお忙しいところを居残って下さったJR2FVO局の指導のもと、取敢えず最初に出来上がった時の短めのエレメント長に戻してみた。
  やや共振周波数が上がったが、まだ低い周波数であった。
  1週間後、少しずつ下辺の幅を短縮(実際は垂直部分の取付位置を内側にずらしただけの手抜き)したり、上辺の導線をカット(実際は少し丸めて短くしただけ)したり給電部の中の同軸ケーブルをカットしたり、ショートバーの位置をずらすなどして調整を試みた。
  その結果SWRは50.700Mhzで1.2、インピーダンス50Ω弱という値に落ち着いた。
  この状態で山梨県のQRP(2.5W局)が55からピーク59で入感していたし、こちらも地上高3mH出力10Wで55のレポートを頂いたので、まあまあ使えるかな、という程度になった。
  特にサイドの切れは抜群で、これで給電部の同軸を確実に調整してカットするなりエアバリを使うなりすれば、移動用アンテナとしてはデルタループより僅かながらゲインがあるはずであり、楽しみである。
  もう一つ、これはアパマンハムにとって有利な形のアンテナではないかと思われる。
  特に、屋上に八木アンテナだと大きくて目立つ、デルタループだと逆三角形でこれも目立つ。
  これに対して、底辺1.5mのエレメントの両端から1.5m前後のアルミパイプが立ち上がっている姿は、上辺の導線が細ければ目立たないので、まるでPHSや携帯の中継用アンテナにそっくりであり、住民からは奇抜とか特異な形とか、そういう印象は生じないのではあるまいか。
  ただ、従来型のクワッドに比べると垂直偏波へ切り替えできないという難点はある。
  今後最終調整と再現製作に向けて遊びたい今日この頃である。
  勿論このアンテナで移動運用するので皆さんcallして下さい。
  最後に、お忙しい中測定を指導してくれたJR2FVO藤井さんとJP1PFM寺井さんに感謝して稿を閉じます。

 

 

 




「TWO-FORTY」誌第51号(平成13年12月発行)掲載

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